手書きで手紙を書くことが減ってきてしまっている昨今ですが、季節の移ろいやその風情にふれる手紙の挨拶は、美しい伝統のひとつ。
今回は、暑中見舞いに使いやすい挨拶例文と、文章に添えるだけで紙面がはなやぐ季節の花「朝顔」の描き方を紹介していきます。
相手の健康を気遣い、元気でいてほしいという気持ちを伝える暑中見舞いに、夏の情景や音を表現した季節感のある文章を書きたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
7月《文月(ふみづき)》
本格的な夏が始まり、暑さが厳しいこの時期の挨拶状として、「暑中見舞い」があります。
「暑中見舞い」は、7月7日ごろの小暑から8月7日ごろの立秋までに送るのが通例となっています。
今回は、暑中見舞いの構成に加えて、少しでも気分が涼しくなるような、7月の挨拶文と朝顔の描き方を、ご紹介します。
暑中見舞いの構成
暑中見舞いは、「お見舞いの挨拶」「時候の挨拶からはじまる主文」「結びの挨拶」「日付」の4つの要素でできています。
お見舞いの挨拶
「暑中お見舞い申し上げます」の後には「。」をつける必要はありません。
本文よりも少し大きく書くと、メリハリがつきます。
時候の挨拶と主文
季節が感じられる一文のあとに、相手の健康を気遣う言葉や自分の近況報告を書いていきます。
結びの挨拶
相手の健康を気遣った思いやりある言葉や、感謝の言葉で最後を締めくくります。
日付
詳細な日付は入れず、年数の下に、暑中見舞いの場合は「盛夏*」と書きます。
※梅雨明け頃から立秋までの夏の一番暑い時期を表す季語。
写真のように、罫線のないハガキのようなものに文章を書く場合は、バランスが難しくて悩んでしまうこともありますよね。
そんなときには、「大切な相手に気持ちが伝わる、とっておきの美文字レッスン」の「3.文字を書く上で意識すること」の項目を参考にしてみてくださいね。
7月上旬〜中旬の挨拶文
まずは、7月上旬〜中旬のお手紙に使いやすい、挨拶文の例とインクの組み合わせです。
7月上旬〜中旬の挨拶文の例①
空の青さに夏の到来を感じる今日この頃、
夏の暑さではなく、夏空の青に目を向けて、鮮やかな景色を想像させる一文。
この挨拶文には、まさに鮮やかな空の青、『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 蒼天』を使用しました。
7月上旬〜中旬の挨拶文の例②
まぶしい日差しの中に、蝉の声が賑やかな季節となりました
なんといっても夏らしい太陽の光に、夏を代表する音を加えた季節感たっぷりのお手紙に。
この挨拶文には、太陽が照りつける地面や、蝉などの自然を感じさせてくれる色味の『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 土用』を使用しました。
7月中旬〜下旬の挨拶文
続いては、7月中旬〜下旬に使いやすい挨拶文とインクの組み合わせです。
7月中旬〜下旬の挨拶文の例①
夏の朝を彩る朝顔に、ひとときの凉を感じる季節になりました
朝顔が咲く午前中の時間帯のかすかな「涼」に注目して、その涼しさをお相手と共感したいという気持ちを表現してみました。
この挨拶文には、少し暗めの紫色が、ほの暗い明け方に咲く朝顔のようにも感じる、『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク はらはら』を使用しました。
7月中旬〜下旬の挨拶文の例②
うだるような暑さが続くなか、お変わりなくお過ごしでしょうか。
容赦のない暑さについて触れながら、お相手を気に掛ける言葉を含めた挨拶文にしてみました。
この挨拶文には、清涼感のある、青味がかったグレーの色味の『万年筆用ボトルインク ゆらめくインク 染料 20ml 極光』を使用しました。
季節の花 『朝顔』の描き方
今回は、夏の朝を彩る朝顔の描き方をご紹介します。
本格的な夏が始まるこの時期に咲く朝顔は、その花びらだけでなく、くるくると伸びるツルも特徴的。
紙面に空いてしまったスペースを埋めるようにツルを伸ばしてみるといった遊び心を添えてみるのも楽しいですね。
使用するインク:
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 匂菫』
■『万年筆用ボトルインク ゆらめくインク 染料 20ml 極光』
1.下書き
まずは、鉛筆で下書きを描いていきます。
花びら2輪を主役に、ツルを上と左方向に伸ばして、葉を散りばめます。
文章を書くエリアを囲むようにツルを伸ばしてみましょう。
葉は三角形で大体の形をとっておくと、詳細な形を描きやすくなります。
正面から見た花びらは正円、斜めから見た花びらは楕円を意識して、形をとります。
難しい場合は、正円だけでも充分に朝顔を表現できます。
花の中央部分に星形を描き、中心の白くなっている部分を表現します。
2.ツルと葉を塗る
まずはツルと葉を『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯』を使って塗っていきます。
3.花びらを塗る
次に、花びらを塗っていきます。
正面を向いている花びらには、『万年筆用ボトルインク ゆらめくインク 染料 20ml 極光』を使用しました。
斜めを向いている方の花びらには、『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 匂菫』を使用しました。
筒状になっている部分には、ほんのわずかに色が残るくらいに水で薄めた『匂菫』を使用しています。
おわりに
一年で最も暑い夏の時期に送る「暑中見舞い」。
日頃お世話になっている人や親戚などへ健康を気遣う気持ちをしたためてみてはいかがでしょうか。
相手を思いながら文章を書いたり、季節の花を描くことは、私たちが過ごしている日々の中の、見落としてしまいそうになる物事や景色に改めて意識を向けさせてくれます。
丁寧に時間をかけて、ゆっくりと書いていく手書きの手紙ならではの魅力です。
そんな、心が温まる手書きによる交流を、ぜひ皆さんも楽しんでみてくださいね。