クリスマス、お歳暮、年賀状など、何かと書き物が多い年末年始。
普段やり取りのない人と年に一度のやり取りをしたりする方もいますよね。
あまりない機会だからこそ「こんなときこそ万年筆を使ってみよう」と思う反面、字に自信がなくてちょっと面倒に感じたり、遠慮してしまったり、「もっとうまく書けたら…」と思う人も多いのではないでしょうか?
そこで今回はそんなお悩みを持っている皆さまのために、プロに《美文字》になれるコツを聞いてまいりました!
今回は、東池袋で書道教室を運営されている『利根川秀佳(とねがわ しゅうか)』先生にwith ink.スタッフが実際にコーチングを受け、万年筆で美しい字を書くコツを教えていただきました。
クリスマスカード、お歳暮に添えるメッセージ、年賀状などこの時期に書くことが多い文言をお題に、アドバイスをいただきましたので、ぜひ皆さんも参考にしてみてくださいね。
今回レッスンを受けたスタッフの悩み
・文字がゆがんでしまうことがよくある。
・書いているうちに行が斜めになっていってしまう。
・《しんにょう》などの特徴的なパーツが綺麗に見える形がわからない。
・ひらがなをやわらかく書くのが難しい。
目次
『利根川秀佳』先生プロフィール
今回美文字のコーチングをしてくれたのは、1000人以上の方に書道指導を行い、毛筆師範・ペン字師範の資格を取得している、利根川秀佳先生です。
公式HP:https://syuuka.com/
現在は東池袋で書道教室を運営しているほか、現代書作家協会・臨書部門事務局長、産経国際書展や21世紀国際書展などで多くの審査員をしている、まさに美文字のプロ!
そんな利根川先生に万年筆で綺麗な字を書くコツを教えてもらいました。
まずは持ち方
「文字がゆがんでしまって難しいんです」というスタッフの悩みを聞いた先生は、早速万年筆の持ち方を意識することが大事だとアドバイスをしてくれました。
先生「親指と人差し指で万年筆をしっかり挟みましょう。更にもう一点、持つ位置も意識してみてください。ペン先に近すぎるところを持ってしまうと自分の指が邪魔して、書いている文字が見えなくなってしまいませんか?」
スタッフ「確かに!自分で書いている字を隠してしまっていました」
先生「自分がどんな文字を書いているのか見ながら書くのが綺麗な字を書くポイントです。持ち方が悪いと体や頭が変な角度になってしまうので、持ち方には気をつけましょう」
持ち方や持つ位置を普段意識していなかったので、目から鱗のスタッフ。
さらに、先生からアドバイスが。
先生「ペン先に近い方を持つと万年筆が立ってしまうのですが、文字が見えるように持つ位置を変えるとしっかりペン先のスリットが紙に当たるように持つことができて、自然とインクも出やすい角度になるんです」
美文字ポイント
・万年筆を持つ位置に気をつけよう
・書きながら書いている文字が見えるように万年筆を持とう
・万年筆は、「寝かせて」書くのがポイント
文字を書く上で意識すること
まっさらな紙を前にすると、書き始めるのに緊張することがありますよね。
文章を書くにあたって、全体を通して意識すべきことをお伺いしてみました。
先生「とにかくいつも、自分が何を書いているか見えることが一番大事です。先ほど言ったように下の方で万年筆を持つと、文字を見ようとして変なふうに紙をずらしたりしてしまうので、紙をまっすぐ置いて自分が書いている文字が見えるように書くのが美文字への上達の一歩です」
スタッフ「まずはとにかく何を書いているかがわかる状態が大事なんですね」
先生「それと文字の中心を揃える。そして文字の幅を揃えたり、文字の線の長さを全体のバランスを見て書くということを意識するのが大事です」
いつの間にか文が斜めに曲がっていってしまうこと、ありますよね…。
先生「これらを踏まえて書いてみると、すごく頭を使うので、意識するべきポイントを整理しながら丁寧にゆっくりと書いていきましょう」
美文字ポイント
・文字の中心を揃える
・書いている文字や文章のバランスを見る
クリスマスカード編
いよいよスタッフが書いた文字を見ていただきます!
まずはクリスマスカードのメッセージから。
先生「いつも字を書く時にトメ、ハネ、ハライは気にしていますか?」
スタッフ「きっちり気にして書いてはいなかったです」
先生「そうですよね。実は最初にお伝えした持ち方に気を付けるだけで変わってくるんです。文字の横線は真横でも、下がっても、上がりすぎても駄目で、若干右に上がるくらいで書くと綺麗な字の基本になるんです。正しい持ち方をするとちょうどいい上がり方の線が書きやすいんです。そして、力の入れ方が変わりトメ、ハネ、ハライがうまく出来るようになります。」
スタッフ「《しんにょう》は書くのが本当に難しいです」
先生「本当に難しいですよね。《しんにょう》は最後の長い線は、編の上にあるつくりの1番右側まで線を引いていき、そこからしっかりはらうのがポイントです」
《しんにょう》の他にも、クリスマスカードに書いた文章の中に出てきた注意ポイントを解説していただきました。(画像の中の赤い●のところで、グッと一息止めてから線を引くことで、メリハリのある字になるとのこと)
ご指導いただいた文字の形を意識しながら、再度クリスマスカードの文章を書いていきます。
スタッフ「一つのことに注意して書くと、他の注意して書かなきゃいけないことを忘れちゃいますね…。けれど、持ち方を直したことで文字がしっかり見えているので、ハライなどがしやすくなりました!」
お歳暮に添えるメッセージ編
続いては、お歳暮などの贈り物に添えるメッセージを見ていただきました。
スタッフ「漢字が難しかったのと、意外とひらがなのバランスが取りづらくて苦戦してしまいました」
先生「そうですよね。普段教室で教えている生徒も、やはりひらがなの方が上達が難しい傾向があります。ひらがなは曲線が多いのですが、みなさんまっすぐ直線に書いてしまうんです」
スタッフ「特に《よ》にいつも苦戦してしまうのですが、何かコツはありますか?」
先生「《よ》の縦線を書くときは少し右に曲げて書くと、綺麗になりますよ」
スタッフ「いつもまっすぐに縦線書いてました!」
先生「これを意識すると《よ》だけじゃなく《ま》《は》《ほ》なども同様に書きやすくなりますよ」
《よ》の他にも、お歳暮などに添えるメッセージによく出てくる文字のポイントを解説していただきました。
先生「どんな字でも線の書き出しで、一度止まる事をおすすめします。止まってから線を引くということを意識すると字がグッとかわるのですが、たいてい皆さん止まることをしないんですよね」
スタッフ「なるほど。ゆっくり丁寧に書く。というところにも繋がってきますね。確かにそこを意識して書いていくことで、メッセージを送る相手への気持ちや想いがこもっていくような感覚にもなりますし、重要なポイントですね」
ご指導いただいた文字の形を意識しながら、再度お歳暮に添えるメッセージの文章を書いていきます。
スタッフ「段々教えていただいたものが身についてきたようで、自分で言うのもなんですが、とても字が綺麗になってきた気がします!」
年賀状編
最後に、年賀状を見ていただきました。
スタッフ「年賀状が一番難しかったです!ひらがなが多くて、漢字もバランスよく書くのが難しかったです。文字の大きさが均等にならなかったり、行が斜めになってしまうのが悩みなのですが、これは書いて慣れるしかないのでしょうか?」
先生「そうですね。これまでお伝えしてきたポイントを日頃から意識して練習していくことが大事です。そして行が斜めになってしまうというところは、やはり中心を揃えるように意識することがコツになります」
ひらがなが多い年賀状の文章。注意すべきポイントをご指導いただきました。
その他にも、年賀状を書くときに出てきやすい文字のポイントも教えていただきました。
ご指導いただいた文字を意識しながら、再度年賀状の文章を書いていきます。
先生「最初と比べると文字がすごく変わりましたね!」
スタッフ「ありがとうございます!やはり綺麗に書くためには、すごく頭を使いますね。でも綺麗な文字を書けるようになってきて、もっと書いてみたいと思いました!」
おわりに
今回は利根川先生にお越しいただいて、《美文字》になるためのポイントを教えていただきました。万年筆の持ち方をはじめ、字を綺麗に書くコツが満載でした。
クリスマス、お歳暮、年賀状などに手書きのメッセージが添えられていることで、気持ちの伝わり方も違ってくるのではないでしょうか。
文字を書くのは本当に奥が深く、先生曰く教えてもらったその日だけ頑張っても字は綺麗にならないとのこと。
日々、綺麗な文字を意識して書いていくことが重要です。
皆さんもぜひ今回の記事を参考に、《美文字》への一歩を踏み出してみてくださいね。