インクを知る

桜前線到来! 桜の『ご当地インク』特集

前回の『ご当地インク』特集では、フルーツにまつわるインクを紹介いたしました。

第5弾となる今回は、前回同様『ご当地インク』に詳しい文具ライターのふじいなおみさんに協力をいただき、桜をモチーフにした『ご当地インク』をピックアップしてみました。

同じ桜をモチーフにしながらも、それぞれに個性が光る『ご当地インク』をお楽しみください。

(製品提供:ふじいなおみさん)

これぞ桜!ピンク色の『ご当地インク』

文具の杜:一目千本桜 宮城県

宮城桜の名所 白石川河川敷から「一目(ひとめ)千本桜」を一望した時の色感を表現したインクです。

宮城県柴田郡の大河原町と柴田町の中心を流れる白石川の堤に8kmにわたり、約1,200の桜が咲き誇る「一目千本桜」。
雪の蔵王連峰と満開の桜並木が白石川に映る、日本が誇るさくら名所百選の地です。

ふじいなおみさん:
「桜の色を想像すると、鮮やかなこんな色を想像する方が多いのではないでしょうか?インク瓶に入ったインクも鮮やかで反対側が透けるきれいなピンクです」

とみや:あきた色百景萬年筆インク しだれ桜(角館) 秋田県

「秋田を色で表現したらどうなるんだろう?」、「秋田を散歩するかのように書く楽しみを味わってもらいたい」。そんな思いから企画・開発されたオリジナルインクです。

しだれ桜(角館)は角館の武家屋敷に咲くしだれ桜をイメージした桃色系。花言葉は、「優美」。

18世紀の末頃より武家屋敷の各戸に植えられはじめたと言われるシダレザクラ。
地域住民や役場職員の方々の熱意と努力で、美しい桜の景観が維持されています。

ふじいなおみさん:
「外箱には武家屋敷の門と満開の枝垂れ桜が味わいのあるイラストで描かれています。黒板塀の建物と美しく力強いシダレザクラのコントラストに触れたくて同じ風景を探しに行きたくなります」

八文字屋:久保桜ブルームピンク 山形県

樹齢1,200年 山形県長井市の名木、国の天然記念物にも指定されている「伊佐沢の久保桜」がモチーフ。淑やかに咲く桜の花びらを淡いピンク色で表現したインクです。

日本有数のエドヒガンの古木で、坂上田村麻呂と地元の豪族の娘お玉との悲恋の伝説が残っています。
江戸時代には枝の広がりが四反にも及んでいたことから、四反桜(よんたんざくら)とも呼ばれていました。

ふじいなおみさん:
「エドヒガンはソメイヨシノの親に当たる品種ということで、薄く儚いピンク色が表現されています。塗り重ねた時のインクの色の表情が豊かですよね」

夜桜を感じる『ご当地インク』

文具館タキザワ:雪彩 高田城の夜桜 新潟県

「美しい新潟の色」をイメージしたボトルインクシリーズ「雪彩(sessai)」。
日本三大夜桜の一つに数えられる高田城の夜桜がテーマ。ぼんぼりの明かりに照らされ、水面に映る淡く儚い色は、雪国に春の訪れを告げる喜びの色でもあります。

高田城址公園に植樹されているサクラはほとんどが「ソメイヨシノ」で、園内約4,000本の桜が咲き競います。
上野の恩賜公園、弘前公園とともに日本三大夜桜の一つに数えられています。

ふじいなおみさん:
「夜の桜は昼間と違う表情で私たちを楽しませてくれます。暗い中でぼんぼりに照らされたお堀の水面に映る桜の色が見られるのは一年のうちわずかな期間。だからこそ、インクとして作られたのかなと感じました」

Pentonote:ヨノモリサクラ 福島県

「ヨノモリサクラ」は、あのとき誰も見なかった夜ノ森の桜の色をイメージしたインクです。インクの色、ピンクと青の色合いが、照らされた夜桜のトンネルを想わせます。
Pentonoteさんがこのインクに込めた、言葉のひとつひとつを大切にご紹介します。

静かな夜の記憶、月の光、そして風に揺れる花影――。
ヨノモリサクラが何年も美しく咲き続けることを願って。

福島県双葉郡富岡町夜ノ森。
そこには「桜トンネル」と呼ばれる、美しい桜並木があります。

春の訪れとともに、満開の桜がやわらかな灯りに照らされ、夜の街をほんのりと桃色に染め上げます。幻想的なその風景を求めて、多くの人々が夜ノ森を訪れていました。満開に咲き誇る桜は、人々の心にそっと記憶を残していきました。

しかし、2011年。東日本大震災により、そこは長く立ち入り禁止区域となってしまい、かつての賑わいは桜の花びらのように静かに舞い去りました。

あれから12年。
それでも桜は、誰に見られることもなく、静かに咲き続けていたのです。

そして今、人々の笑顔が少しずつこの地に戻り、その光景に桜もまた、風に揺れながら、嬉しそうに春を迎えているようです。

この桜の色を忘れないように、そしてずっと見ることができますように。

そんな想いを込めて作りました。

東日本大震災と原発事故で長い間帰還困難区域になっていましたが、2022年春に全長2.2キロ全ての観桜が可能になりました。
夜間にライトアップされた桜の幻想的な美しさは必見です。

(画像提供 富岡町観光協会)

ふじいなおみさん:
「インクの発売から時が過ぎ、今年で東日本大震災からから15年になります。 夜空の紺色に揺色として現れるピンク色の桜。この色からまずは、自然の強さを感じます。そして、想像の域を出ませんが震災や地元の方々の想いを自分なりに考えるきっかけを与えてくれます」

※画像内のボトルに付いているタグは、現行品には付属しておりません。

これも桜色なんです!珍しい桜の『ご当地インク』

平山萬年堂:御衣黄桜(ぎょいこうざくら) 青森県

平山萬年堂が販売する「弘前八重紅枝垂桜」・「御衣黄桜」・「弘前緋桜」・「弘前ピンクグレー」の4種の桜をテーマにしたインクの1つです。

弘前城の敷地に広がる弘前公園。こちらで見られる桜は50種類以上!
その中でも御衣黄は桜の品種の中では珍しい、さわやかな黄緑色の花色が特徴の桜です。

ふじいなおみさん:
「50種類以上もの桜が植えられている弘前公園。中にはこのような変わった色の桜もあるのだなとまずは驚きました。子どもの頃、家族旅行で訪れたことがありますが、大人になった今、品種の違いを楽しみにまた足を運んでみたくなりました」

おわりに

今回は、桜をモチーフにした『ご当地インク』を紹介してきました。たくさんの素敵なインクが登場しましたが、ふじいなおみさんはこんな風に振り返っています。

「今回ご紹介した桜のインクは、いずれも冬の寒さが厳しい地域の文具店の商品です。私も北国出身なので、春を待ちわびる気持ちはとてもわかります。雪が溶けて、桜の花が咲くのが春の訪れの合図なのです」

同じ「桜」をテーマにしていても、ひとつひとつ大きく異なるのが『ご当地インク』の魅力です。

今回の取材を通じて、そこにはただ美しいだけでなく、守りつづけたい風景や忘れられない記憶といった、その土地ならではのストーリーが息づいていることを改めて感じました。

皆さんの好きな場所や、心に残る桜をモチーフにした『ご当地インク』があるか、ぜひ探してみてくださいね!