突然ですが皆さんは、インクが複数の色素から構成されているということをご存知でしょうか?
一見濃い赤色に見えるこちらのインク。
インクで点を打ったろ紙を水につけてみると…
なんと1色のインクの中から、水色と黄色、紫色が現れてきました!
これは、紙と水を使ったペーパクロマトグラフィーという手法でインクの中の色素を分離させたものなのです。
今回は、いろいろなインクを分離させて、普段使っているインクにどんな色素が含まれているのかを調べてみました!
興味深い結果を多く見ることができましたので、ぜひチェックしてみてくださいね。
目次
ペーパークロマトグラフィーでインクの色素を分離
インクの色素を分離させるペーパクロマトグラフィー。
学生の頃に理科の実験で体験したことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
ろ紙を水につけると、毛細管現象によって水が紙の繊維の間を上昇していきます。
上昇していく水にインクが溶けていき、水と馴染みやすい色素は水と一緒にどんどん上昇、紙に定着しやすい色素は途中で上昇が止まります。
その結果、インクの中に含まれる色素が分離して現れるのです!
この写真の場合だと、黄色や水色の色素は水に溶けたまま紙の上の方まで進み、赤〜紫の色素は途中で紙に定着して上昇が止まっています。
同じ色に見えても中身は違う? 同系色のインクを比較
似たような色のインクの場合、同じような色素で構成されているのかを実験してみました!
今回は、青系と赤系、緑系のインクをそれぞれ分離させてみましたので、その結果をご紹介していきます。
青系インク4色を比較
まずは、青系のインク4つの結果を見てみます。
『万年筆用ボトルインク 50ml ブルー』は、赤い色素が含まれていました!
『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 山鳥』にはほのかに黄色が見えます!
『蒼天』と『ざあざあ』の結果は似ていますが、『ざあざあ』には少し灰色がかった青が含まれているのが見えます。
赤系インク4色を比較
続いては赤系のインク。
『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』は、インクのスタート地点には全くインクが残っていませんでした!どの色素も水に溶けやすいようです。
『夜焚』と『囲炉裏』を比べてみると、紙の上の方は同じように見えますが、『夜焚』には、スタート地点に灰色のような色素が残っています。
『奥山』からは、多くの色を見ることができます。1色のインクから多くの色素が現れると、インクが繊細な配合によって出来上がっているということを実感させられますね。
緑系インク4色を比較
緑系の比較では、4つのインクそれぞれで大きく違った結果をみることができました。
『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯』は赤系の『桜森』と同様に、スタート地点には、全く色が残らず、上の方で青、緑、オレンジと細かく分離しています。
『垂髪』は、青みがかった灰色と黄色、『海松藍』はほのかに緑を感じる紺色と黄色に分離されました。
『常盤松』は元のインクの色からは想像しにくい、明るい青が姿を見せました。この意外な結果を見て、さらにいろいろなインクで試したくなってきました。
シマーインクやシーンインクはどうなる? いろいろなインクで実験
同系色での比較のあとで試してみたのは、シマーインクやシーンインク。
ギラギラとした光沢を見せたり、たっぷりのラメによって輝いたりするこれらのインクが、どういった結果になるのかが気になります。
早速確認していきましょう。
『つけペン用ボトルインク Dipton ブルーフレーム/シーン』では、かなり鮮やかな青色が上まで昇ってきて、その中にはっきりとした濃淡を見せているのが印象的です。その下にわずかに赤色も見えます。
『つけペン用ボトルインク Dipton メローフォレスト/シマー』で気になっていたのは、インクの中のラメがどうなるのか、だったのですが、ラメはスタート地点にとどまっていました。
ラメは重く、昇っていく水についていくことはなかったようです。一方色素はしっかりと昇って、青緑色と黄色が広がっていました。
お家で簡単! ペーパークロマトグラフィーのやり方
インクにどんな色素が含まれているかを知ることができるペーパークロマトグラフィー。
ろ紙を使って実験をしていたのですが、実は、コーヒーフィルターを使っても同様に色の分離を観察することができます。
そこで今回、コーヒーフィルターを使ってお家でも簡単にできる方法をご紹介します。
用意するものはこちら!
・お好みのインク
・コーヒーフィルター(白)
・ハサミ
・割り箸
・筆(つけペンでも大丈夫ですが、コーヒーフィルターに書きづらいので筆がおすすめ)
・なるべく背の高い水入れ
コーヒーフィルターはどんな形に切ってもよいですが、短冊状にすると観察しやすいので、おすすめです。
①コーヒーフィルターの折り目の辺から垂直にハサミでカットします。
②四角になるように折り目をつけてからカットします。
③元々ついていた折り目を開いて、お好みの幅で短冊状にカットします。
④短冊の端から少し上にインクで点を打ちます。
⑤インクで点を打った短冊を割り箸で挟んで固定します。
⑥短冊の端っこだけが水に浸るように水位を調整してください。
⑦水入れのフチに割り箸を渡して、インクが分離していく様子を観察します。
⑧5〜10分を目安に水から引き上げて、乾かしてあげましょう。
お家にあるもので簡単に実験できますので、自分の使っているインクがどんな結果になるのか気になるという方は、ぜひ試してみてください!
【応用編】ペーパークロマトグラフィーを使って朝顔を表現
最後に、応用編として、with ink.のInstagramに投稿した動画に登場した、朝顔の作り方もご紹介します!
用意するものはこちら!
・お好みのインク(今回は『万年筆用ボトルインク ゆらめくインク 染料 20ml 伊達心』を使用)
・円形のろ紙(コーヒーフィルターだと柔らかすぎてうまくいかなかったため、ろ紙がおすすめ)
・筆(つけペンでも大丈夫ですが、多くのインクをつけられるので筆がおすすめ)
・平たい容器(ペットボトルのキャップでも代用できます)
①円形のろ紙を用意します。
②半分に折り、もう一度半分に折ります。
③袋になっているところを開いて、折りたたみます。
④反対側も同じようにしてベースの形が出来上がります。
⑤それぞれの角を中割折りしていきます。くぼみが内側と外側に交互になるように折っていきます。
⑥花の中心から少し外側にインクを塗ります。
⑦平たい容器(ペットボトルのキャップ)に水を入れ、花の中心だけが水に触れるように置きます。
⑧インクが広がっていくのを待てば完成です!
水が浸透することで、本物の朝顔のように徐々に花びらが開いていきます。
端に濃い色が溜まり、中央付近が白く残ることで、朝顔らしいグラデーションを作ることができますね!
おわりに
今回は、ペーパークロマトグラフィーの原理を利用して、いろいろなインクの色を分離した結果をご紹介しました。
実際に実験をしてみることで、普段なにげなく使っているインクの秘密を知ることができたような感覚でとてもワクワクしました!
そして、ただ実験するだけでなく、色が分離する様子を利用して朝顔を表現でき、その奥深さも実感することができました。
with ink.では今後も、インクの楽しみ方の幅が広がるような使い方を発信していきますので、よろしくお願いします!