前回の『ご当地インク』特集では、夏にまつわるインクを紹介いたしました。
第4弾となる今回は、前回同様『ご当地インク』に詳しい文具ライターのふじいなおみさんに協力をいただき、フルーツをモチーフにした『ご当地インク』をピックアップしてみました。
色とりどりの果実が再現された『ご当地インク』をお楽しみください。
(製品提供:ふじいなおみさん)
目次
東北地方のフルーツ『ご当地インク』
八文字屋(山形県) YAMAGATA fruits ink・さくらんぼ

山形県は生産量が日本一のさくらんぼ王国。30種以上の品種が植えられています。旬は6月中旬~7月下旬で、まさに今が旬のフルーツです。
ふじいなおみさん:
「こちらのインクは、ルビーのような輝きを放つ佐藤錦をイメージして作られたインクです。甘さと酸味のバランスがちょうどいい、瑞々しさを感じる絶妙な赤が素敵です」

さくらんぼといえば名前を聞くことの多い《佐藤錦》、県全体の栽培面積の70%を占めています。
大正11年に県内の佐藤栄助氏が育成したから《佐藤錦》という名前になったのだとか。
平山萬年堂(青森県) 津軽黒房スグリ

《黒房スグリ》は、《カシス》の和名で、青森はカシスの国内生産量が日本一。
カシスは、抗酸化成分として知られる《ポリフェノール》を多く含み、眼精疲労の軽減、目の下のくまの緩和、抹消血流改善などにも効果的と言われており、健康や美容面でも注目されています。
ふじいなおみさん:
「カシスのような濃い紫が再現されたインクです。
《黒房スグリ》が《カシス》のことなんだというのを、このインクをきっかけに知ることができました。こんなふうに、インクきっかけでなにかを知ることができたりするのも、楽しいポイントですね」

実は、熟練した生産者でも1時間にわずか1.5kg程度しか収穫することができない、贅沢なフルーツなんです。
pen.(岩手県) いわてのいいイロ COLOR INK 岩泉リトルサンシャイン

岩泉産の食用ほおずきは《ほおずきんちゃん》という名前で、ミニトマトほどのサイズ感。おいしくて身体にもうれしい、岩手県岩泉のブランドです。
そのままでももちろん、ジャムやコンポートも大人気。
ふじいなおみさん:
「このインクは、地域の色で地域を活性化させようという取り組み『いわてのいいイロ発信プロジェクト』の一環として作られているご当地インクです。
《特産品作りは産地作りから》の想いを胸に栽培経験ゼロから試行錯誤を重ね、今では岩泉を代表する産物となっている《食用ほおずき》。そんな地域の思いを感じることができるのも『ご当地インク』の魅力です」

観賞用というイメージのある《ほおずき》ですが、ヨーロッパでは美容や健康にいいフルーツとして、《食用ほおずき》はポピュラーな存在。
関東・中部地方のフルーツ『ご当地インク』
三田三昭堂(群馬県) 華インク「オリーブ」

国産オリーブの生産地というと香川県が有名ですが、群馬県は年平均気温が15℃で日照時間も長く、果樹栽培に適しているとされています。
三田三昭堂がある館林市を中心に県内各地で、多くの方々が情熱を持ってオリーブ栽培に挑戦しています。
ふじいなおみさん:
「クラウドファンディングで耕作放棄地を活用してオリーブを育てるプロジェクトのリターン品の1つに含まれていたのがこちらのインク。
オリーブインクの開発には時間がかかり、クラファンのリターンとして予定より遅れて配達することになったのですが、それだけこだわったインクと言えます。
江戸切子風のボトルに入ったインクにはオリーブの香りも付けられていて、目と鼻で楽しむことができるインクです」

耕作放棄地を活用できる作物として白羽の矢が立ったのが《オリーブ》。
文具館タキザワ(新潟県) 雪彩 【おけさ柿】

代表産地である佐渡の民謡《佐渡おけさ》が由来となっている《おけさ柿》は、新潟県産の種なし渋柿です。収穫後行う渋抜きによるとろけるような食味やまろやかな甘さが特徴的。
ふじいなおみさん:
「濃厚なオレンジ色はもちろんですが、なんといっても米袋のようなパッケージが印象的です。お米が有名な新潟ならではのユニークさがあり、贈り物にもぴったりです」

新潟のかきの歴史は古く、慶長8年(1603年)に佐渡市羽茂地区から始まったとされています。
新潟市秋葉区には樹齢300年余りの「平核無」の原木があるのだとか。
文具館コバヤシ オリジナルインク【しぞーかインク】いちご

駿河湾に面し日照の豊富な斜面と、石垣に蓄えた輻射熱を利用した栽培方式は、通称《石垣イチゴ》と呼ばれ、静岡市の海岸地域独特のものになっています。
例年12月頃~5月頃までのいちご狩りも楽しまれています。
ふじいなおみさん:
「『しぞーかシリーズ 』は地元にある静岡産業大学コラボ企画からうまれたシリーズです。こちらは『いちご』の名の通りいちごの香りつきインクなのですが、『くらげ』や『りゅうぐうのつかい』がモチーフのラメ入りインクも出ていて、とても遊び心のあるシリーズとなっています」

静岡県でのいちご栽培が始まったのは、明治時代からと言われており、最近では立ったままの姿勢で収穫できる、高設養液栽培が急速に広まってきています。
中国・四国地方のフルーツ『ご当地インク』
うさぎや(岡山県) マスカット

岡山県は全国のマスカット・オブ・アレキサンドリアの95%を生産する、全国1位の生産量を誇っています。
エジプトが原産の《マスカット・オブ・アレキサンドリア》は、その姿・香り・味のすべてにおいて気品があり、 クレオパトラも食べていたと言われていることから《果物の女王》とも呼ばれています。
ふじいなおみさん:
「栽培の長い歴史や背景が込められた、マスカット・オブ・アレキサンドリアの美しいエメラルドグリーンを再現したこちらのインクは、《果物の女王》の気品も感じられるグリーンになっています」

栽培の歴史は130年に及ぶ長い歴史の中で、受け継がれ磨かれてきた、マスカット・オブ・アレキサンドリアの美味しさ、美しさは逸品です。
マスカット以外にも、『ピオーネ』や『白桃』といったフルーツがモチーフのインクが作られています。


多山文具(広島県) Color Traveler 広島レモンイエロー

日本で一番の国産レモンの産地として知られている広島県。
瀬戸内の気候がレモンの栽培に適していること、明治末期から大正初期にかけての価格高騰などにより、急激にレモン栽培が広がっていきました。
ふじいなおみさん:
「さまざまな料理やお菓子となって楽しませてくれるレモンをイメージしたインク。
そんなレモンの瑞々しい緑がかった黄色がインクで再現されていて、温暖な瀬戸内海の島々の空気を想像させてくれます」

瀬戸内沿岸の地域は、温暖かつ台風の襲来が少なく、雨の少ない気候からレモンの栽培適地となっています。
ふじいなおみさん:
「レモンの他にも『三次ぶどうパープル』というぶどうがモチーフのインクも販売されています。
そして『Color Traveler』シリーズには、インクを小分けにして持ち運ぶための容器やラベルが付属しています。シリーズ名の通り、旅の携行品として楽しむための工夫が行き届いたシリーズになっています」


文具生活(四国地方) SHIKOKU COLORS 蜜柑オレンジ

愛媛のみかんは全国トップクラスの生産量を誇り、目の前に広がる瀬戸内海や太陽に照らされる段々畑など、理想的な自然条件が甘さと酸味のバランスが絶妙な美味しいみかんを育てます。
ふじいなおみさん:
「四国の色を愉しむことをコンセプトに文具生活さんが作られている『SHIKOKU COLORS』シリーズで、ジューシーで鮮やかなみかんが再現されたインクとなっています。
愛媛出身の方にこのインクをお裾分けしたところ、大切にしてくださってるという連絡がありました。人とのつながりを感じることができた思い入れのあるインクです」

みかん、いよかん、不知火などを含め、生産品種が多いのも愛媛県の特長。
かんきつ同士をかけあわせた新しい品種の開発も進められています。
おわりに
今回は、フルーツをモチーフにした『ご当地インク』を紹介してきました。
それぞれの地域の名産物がモチーフとして取り上げられていて、その地域の風景までをも想像させてくれるのが、『ご当地インク』の面白いポイントではないかと思います。
そして、インクをきっかけにその土地の名産や歴史についても触れることができるのも魅力の一つです。
皆さんの好きなフルーツをモチーフにした『ご当地インク』があるか、ぜひ探してみてくださいね!