市販されているインクの中には、色もさることながら、魅力的なデザインのインクボトル(インク瓶)が数多く存在します。インクを集めていくうちに、色よりもボトルのデザインに惹かれて、ついインクを買ってしまった経験もあるのではないでしょうか?
今回の記事では、with ink.が特に「面白い!」「おしゃれ!」と感じた魅力的な、国内外の様々なインクボトルから、いくつかをピックアップしてご紹介します。
インクの魅力の一つでもあるボトルデザインの世界をお楽しみください。
(個々に提供元記載のないインク:ふじいなおみさんご協力)
目次
国内のおしゃれインクボトル
三田三昭堂:墨インク「珈琲 コーヒー」 55ml
群馬県館林市で昭和3年創業の三田三昭堂から販売されている墨インクは、江戸切子風のボトルデザインが特徴。オーナーが、伝統的なヨーロッパの化粧瓶の展示会を訪れた際に、日本的なインク瓶の着想を持ったことがきっかけで、伝統工芸である江戸切子をイメージして作られています。
しかし実際の江戸切子は、その工程のほとんどが手作業のためコスト面での問題があり、切子の手彫りはあきらめたものの、精巧な金型をつくり、ガラス工房では職人が6名のチームとなって手作業でこのインク瓶を製造しているそうです。個体差があるのはそのためだとか。
銀座伊東屋:カクテルインク No.73 28:00 45ml 染料インク
明治37年創業の文具店、銀座伊東屋の「Cocktail Ink(カクテルインク)」は、バーカウンターに見立てた空間でインクを絵の具のように調合してもらえるサービス。
写真はインクイベント会場限定のラベルとなっており、通常品とはデザインが異なります。
円形の蓋にぴったりな、丸い時計のシールがあしらわれているのがおしゃれですよね。
用いられているインクボトルは45mlの使いやすいサイズで、思わず机にたくさん並べたくなるかわいい小瓶のデザインをしています。
川崎文具店:水性染料インク【色彩語・百鬼夜講】序章「三途川」
岐阜県大垣市にある大正12年創業の川崎文具店が制作しているコンセプトインク『色彩語』のうち、日本の幽霊、妖怪を古典インクで表現した百鬼夜講シリーズ。
こちらのインクボトルには、プラチナ万年筆の「エンプティボトル20ml・菱形」が採用されています。
店主の川崎さん曰く「インクの題材が厄の部分みたいなものなので、菱形という形が無病息災や厄除けの意味もあることから採用しました」とのこと。
コンセプトを表現したミニチュアのセットが同梱されている凝った作りで、ボトルをぴったり納めることができるようになっています。
※ ミニチュアつきは限定商品のため販売終了
BUNGUBOX:オリジナルインク ヒールシェイプボトル
神田猿楽町に店舗を構える「BUNGUBOX」のオリジナルインクは、カラーラインナップの豊富さだけでなく、ヒールに見立てられたボトルの形状がとにかくおしゃれ。
見た目のかわいさだけでなく、インクの残量が減ったあと、傾けて箱に入れることで万年筆への吸入がしやすくなるという機能性も兼ね備えています。
(インク提供:BUNGUBOX)
パッケージも凝った作りで、横から開く形状に。なお、開封にはこちらの特別な開け方が推奨とのことです。
国外のインク(中国)
薫月文具堂:STARRY INK 星墨 独角鯨尾巴 (イッカク・テイル) 温度変色インク
中国の万年筆インクを取り扱っているオンラインショップ「薫月文具堂」で販売されている「STARRY INK 星墨」シリーズは、中国の上海理工大学の現役大学生で、小さいころからインクコレクターであった余昊源(ユ・ハオユェン)氏のブランド。
球状のボトルの底に施されたパール光沢のサンドブラスト加工は、インクボトルが空になった後、ボトル内のラメ粉末が小さな宇宙のように美しく見えるようにするためのこだわりだそう。
プラスチック製のキャップは日光にさらされても変色しない素材で、インクを手に取った人に月を連想してもらいたいとの思いから、ガガーリンが月に着陸したときに月面で撮影した写真からカラーを取得しています。
他にも、薄めたインクを人の手で塗って仕上げられた紙筒のパッケージなど、使い終わってからも飾って楽しめる工夫が細やかに施されており、コレクター心をくすぐります。
国外のインク(カナダ)
FERRIS WHEEL PRESS:WritingInk – Limited edition(画像左)/WritingInk – FerriTales(画像右)
2010年にカナダのオンタリオ州で設立され、イベント招待状のデザインと印刷を専門とするステーショナリー会社としてスタートしたフェリス・ホイール・プレスのインクボトル。
38ml(画像左)のボトルは高価な香水やシャンペンボトルを、移動遊園地から着想を得たという代表的な85mlと20ml(画像右)のボトルデザインは、ボールやバルーン、オーナメントなどを想起させることで、喜びや遊び心を表現しているそうです。
過去記事に何度かwith ink.でも取り上げてきた、とても人気の高いインクボトルです。
https://withink.sailor.co.jp/report/1885/
https://withink.sailor.co.jp/report/1551/
国外のインク(韓国)
DOMINANT INDUSTRY:Pearl Ink 青蛾 SEIGA Shin Calligraphy
「過ぎ去った季節の見逃してしまった色をお客様にプレゼントしたい」という想いから一色一色、丁寧に作られている、韓国発のインクブランド、DOMINANT INDUSTRY。
カリグラフィー用に作られたこのインクのボトルは、瓶の下部のガラスの重量を増やすことで、瓶の底から覗いたときに、インクの色が見えるように工夫されています。
インク瓶を通して世の中を覗くような体験を提供したい。そんなデザイナーの想いを形にした一本です。
どのように世界が色づいて見えるのか、気になる方は、実際に買ってみて底から覗いてみてはいかがでしょうか。
アンティークのインクボトル①(ペリカン)
現行品のインクボトルも魅力的ですが、これまでの長い歴史の中で生まれた様々なアンティークボトルのデザインもとても魅力があり、味わい深いもの。
ここでは、ペリカンの貴重なインクボトルをお借りして、そのいくつかをご紹介します。
古いものから新しいものまで本当に多種多様で、もしアンティークショップに並んでいても、これが全て同じペリカンの瓶だとは気づかないほど。同じブランドでも、こうして並べてみることで、その変化が際立ちます。
歴史の変遷の中で、求められるインクの容量にも変化があったのか、詳細がわからないだけに、好奇心を掻き立てられます。
(インク提供:高畑正幸さん)
ペリカンのインクボトルの特徴は、なんといってもそのボトルの形状ではないでしょうか。量が少なくなった際にもインクの吸入がしやすいように、年代によって様々な工夫が施されています。
アンティークのインクボトル②(丸善)
明治18年に現在の日本橋店の敷地内で「丸善工作部」としてインクの製造を開始した、丸善。この工作部製のインキが後に「丸善インキ」「丸善アテナインキ」として一時代を築きました。
このアテナインキは、当時販売されていたボトルの形状やラベルのデザインを忠実に再現したもので、丸善120周年(1989年)記念として大正6年の意匠で限定1万個で販売された「復刻モデル」。
昨今のレトロブームも相まって人気が高まっています。
※現在は完売しております。
今回は、そんなアテナインキのアンティークボトルも特別にお借りすることができました。蓋の部分一つとっても、コルクやプラスチック製のものなど素材やエンボスの加工も時期によって様々であることがわかります。(以下写真は順不同になります)
写真提供:株式会社丸善ジュンク堂書店
おわりに
世界の様々なインクボトル、いかがでしたか? 店頭ではなかなか見かけることのない、初めて見るインクボトルも多かったのではないでしょうか? 今回の特集に際してボトルのデザインについて調べてみると、その形には、作り手の様々な想いが込められていることに気づきました。
皆さんも気になるボトルデザインがありましたら、ぜひInstagramのコメント欄で教えてくださいね。