『with Creators』とは、イラストや水彩画、カリグラフィーなどさまざまなジャンルのクリエイターさんと、その作品を通して万年筆やインクの魅力をたっぷり満喫していく、月に一度の連載コーナー。
第4回目のクリエイターさんは、書籍の装画や挿絵、広告のイラストレーションなどの制作をされている『斉藤知子』さんです。
人物、動物、植物などのモチーフを、ファンタジックな世界観から日常的な情景まで幅広く描かれている斉藤さんに、春のおとずれをモチーフにした作品を描いていただきました!
それぞれのモチーフのイメージや、インクを使った制作の感想についてもお話を伺うことができました。
普段はアクリル絵具などを細かく塗り重ねることで作品を描かれている斉藤知子さんが、インクを使って描く「春のおとずれ」をぜひご覧ください。
目次
使用するインクについて
今回の作品では、『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク』の春カラーをメインに、線画部分には『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料』のレッド、オレンジ、ブルーを調合した焦茶色を使用して制作されているとのこと。
春色の穏やかなカラーリングに温かさを感じる、魅力的な作品を深掘りしていきます!
ペン入れ
斉藤知子さん:
「全体的なイメージを春らしく暖色系でまとめようと思い、線画部分には『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml』のオレンジ・レッド・ブルーを調合した、焦茶色を使っています。水ににじまないように顔料インクを用いて線画を描きました」
焦茶色の線で、黒の線とは少し違った温かみを感じる線画に。
使用しているインク:
■『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml レッド』
■『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml オレンジ』
■『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml ブルー』
下塗り
斉藤知子さん:
「背景の下塗りは、薄めた『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』を塗った後に、水だけを含ませた筆で境界をぼかしていき、柔らかい表情を作っています。
また、背景色がついてほしくない部分は、マスキングインクを塗って保護しています(写真の水色部分)」
ふわりと広がる淡いピンク色がイラスト全体の優しく穏やかな雰囲気を感じさせてくれます!
使用しているインク:
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』
梅の花と枝
梅の花
斉藤知子さん:
「梅は『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』をメインに使用したのですが、薄く塗り重ねることで梅の花の丸く可愛らしい雰囲気を表現してみました」
梅の枝
斉藤知子さん:
「枝の部分は『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク』の『桜森』→『若鶯』を交互に塗り重ねていくことで深みを出し、最後に『夜桜』や『玉手箱』といった他の色で節を描くことによって、平べったさをなくして花とのバランスを取っています」
同じ色のインクを塗り重ねたり、異なる色のインクを塗り重ねることで、また一味違った表情が見えてきて、複雑な質感に。
使用しているインク:
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 夜桜』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱』
枝にとまるメジロ
斉藤知子さん:
「メジロは『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯』のみだと私の思うメジロの色よりも少し鮮やかでしたので、途中に一度『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』を薄く塗り重ねることで少し彩度を落としています」
梅と同様に、異なる色を塗り重ねることでニュアンスカラーを含んだ可愛らしいメジロになっています!
使用しているインク:
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』
枝に座る女の子
斉藤知子さん:
「枝に座る女の子は、服と髪部分に先に暖色系である『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク』の『桜森』・『夜桜』を塗り、その上から青みのある『しとしと』と『玉手箱』といった色を重ね、メインである梅よりも少し落ち着いた色味を表現しました。
インクの鮮やかな色と少し彩度を落とした色味のコントラストを楽しんでいただければと思います」
鮮やかな発色の梅の花に囲まれ、枝に座る女の子をメジロが不思議そうに見つめている、なんとも微笑ましい光景にこれからやってくる春が待ち遠しくなります!
使用しているインク:
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 夜桜』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク しとしと』
■『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱』
今回の制作を終えて
制作を終えた斉藤知子さんに、インクについていくつか質問をさせていただきました。
ー今回インクを使ってみた感想はいかがでしたか?
今回インクを使用してみて、透明感と発色の良さがとても新鮮でした。
インクと水を混ぜて使用する際のコントロールが初めは難しかったのですが、
色を重ねて深い色味を表現したり、淡く塗り重ねていくことで色の濃淡をつけていく過程はとても魅力的でした。
普段はアクリル絵具を使用しているので、不透明な色で上から塗ってしまえば後々形や色の修正もある程度は可能なのですが、インクでは後から修正を加えることが中々難しいため、
より計画性を持って塗っていくことが新鮮で面白かったです。
ー今回は春のモチーフを描いていただきましたが、中でも気に入ったインクの色はありましたか?
どのインクも春の気持ちの良い色で全てお気に入りではあるのですが、特にメインで使用した『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 桜森』が気に入りました。
淡く塗ると優しい桜色ですが、塗り重ねたり濃度の高い状態で塗ると目に飛び込んでくるような鮮やかなピンク色で表現の幅が広く、使用していて面白かったです。
ー斉藤知子さんの思う、インクの魅力や面白さについて聞かせてください。
なんといっても透明感が美しいので、色を重ねていく順番や濃度を調節することによって色々な表現ができる、というところが魅力的で奥深いところだと感じています。
今回のイラストでは試せませんでしたが、2色をグラデーションで使うなど、今後試してみたいことがたくさんできました。
使用したインク/画材(セーラー万年筆 提供):
・『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク』
桜森、夜桜、若鶯、匂菫、海松藍、しとしと、玉手箱
・『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml』
レッド、オレンジ、ブルー
イラスト/解説:
斉藤知子
HP:https://www.tomokosaito.com/
Instagram:https://www.instagram.com/tomoko_ko
X:https://twitter.com/tomoko_ko
おわりに
今回は、イラストレーターの斉藤知子さんに、「春のおとずれ」をイメージした作品を描いていただきました。
同じ色を塗り重ねることで深みが増していく様子や、異なる色を塗り重ねることで複雑な質感やニュアンスカラーが表現されるところを見ることができました。
『with Creators』では、さまざまなジャンルのクリエイターさんと一緒に、その作品を通して万年筆やインクの魅力をお届けしていきます。
次回は3月公開予定ですので、どうぞ楽しみにお待ちください。