インクを知る

セーラー万年筆研究開発部に聞く、1色ではない、黒インクの秘密!?

黒インクが並んだ写真

万年筆を買うと、最初に付属していることの多い黒インク。
ベーシックな色でなんとなく使っているけれど、よく見ると黒インクだけでも種類はたくさんあるんです!
そこで今回は、いろいろな黒インクの種類のご紹介と、それぞれの発色や見え方を比べてみましたので、ぜひインク選びの参考にしてみてください。
セーラー万年筆の研究開発部の方にも、お話を聞くことができましたので、詳しく知りたいという方もチェックしてみてください!

※今回の比較には、セーラー万年筆のインクを使用しています。

黒インクの種類

セーラー万年筆のインクだけでも、さまざまな黒インクが存在しています。
大きな分類でいうと、「顔料インク」「染料インク」に分かれていて、それぞれ特性があります。

顔料インクと染料インクの黒インクが並んだ写真
写真左が、顔料インクである『万年筆用ボトルインク 極黒』、右が染料インクである『万年筆用ボトルインク 50ml ブラック』。
顔料インクの筆記線の拡大写真

こちらは、顔料インクの筆記線を拡大した写真です。
滲みが少なく、シャープな印象があります。

染料インクの筆記線の拡大写真

こちらは、染料インクの筆記線を拡大した写真。
紙の繊維へ染み込んでいて、少し滲んだ様子が見えます。

顔料インクの「極黒」と染料インクの「ブラック」を比較!

まずは、顔料インクの『万年筆用ボトルインク 極黒』と染料インクの『万年筆用ボトルインク 50ml ブラック』の2つを比較して、どんな違いがあるのかを見ていきます。

顔料インクと染料インクそれぞれを塗った様子が並んだ写真

文字などの細い線であればあまり差はないように見えますが、広い面積を塗ったときには、少し違いが見えてきました。

顔料インクの塗りを拡大した写真

顔料インクの『極黒』には、やや赤みがあります。

染料インクの塗りを拡大した写真

染料インクの『ブラック』には、やや青みがあります。

この違いは、一体どうして生まれるのでしょうか。
セーラー万年筆の研究開発部にお話を聞くことができました!

「それぞれで使用している顔料、染料自体の発色が異なるため、光の吸収・反射の違いによって、色が異なって見えるのです」

ほかにも、染料インクと顔料インクというそれぞれの特性の違いによって、色の見え方に違いが出るということもあるんだそうです!

「染料は紙に浸透しやすく紙の繊維まで染み込んでいきますが、顔料は紙への浸透はしにくく、繊維上に堆積することで、光の吸収・反射の違いが生まれます。これによっても、見え方に差が生まれてきます」

染料インクのさまざまな黒インクを比較!

続いては、セーラー万年筆のインクの中から4つの黒インクを比べてみました。

■『万年筆用ボトルインク 50ml ブラック
■『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 023
■『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 024
■『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 027

万年筆用ボトルインク 50ml BLACKで書かれた写真

『万年筆用ボトルインク 50ml ブラック』は、先ほど紹介したように、少し青みがかかった黒インクとなっています。

万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 023で書かれた写真

『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 023』は、赤よりの黒ですが、少し紫も感じられる黒インクとなっていました。

万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 024で書かれた写真

『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 024』は、鮮やかめな青を含んだ黒インクとなっていて、ブルーブラックのような雰囲気も感じられます。

万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 027で書かれた写真

『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml 027』は、やや黄味がかった、緑色を感じる黒インクです。

わずかな違いですが、こだわり始めると奥が深く、自分のお気に入りの《黒》を見つけるというのも楽しみ方の1つになりますね!

メーカー開発者が目指す黒インクとは?

ここまで、さまざまな黒インクを見てきましたが、メーカーの開発者さんが、目指す《黒》とは、一体どんなものなのか。
セーラー万年筆研究開発部の方にお聞きしました!

「技術者としてはよりくっきり・はっきりと見える「真っ黒」が出来ないかと考える一方で、「万年筆インクだからこそ楽しめる黒インク」を追求したいという気持ちです。
万年筆インクは、濃淡やインクだまりのフラッシュなど、デジタルや他の筆記具では適わないインクの表現が魅力だと思います。

実は、ブラックのインク濃度は変えずに色味だけを追加してできたのが、『万年筆用ボトルインク インク工房 染料 20ml』の『023』『024』『027』だったりします。
そういう、万年筆インクならではの《黒》の可能性を追い求めていきたいですね」

開発者が思う インクの面白さとは?

今回お話を伺ったセーラー万年筆研究開発部の方に、開発者視点からのインクの面白さを聞いてみました!

「マーカーペンやその他の筆記具ではよくあるのですが、万年筆も蓋をしばらく外していてもインクが乾燥しにくいように、インクの成分の配合が考えられているところが面白いポイントだと思います。個人的には入社するまで万年筆インクでそのような点が考慮されていると思っていなかったので驚いた記憶があります。
このことを知ってから試しに万年筆やガラスペンで書いてからしばらく放置した後にもう一度書いてみたところ、ちゃんと書けて感動しました」

万年筆のペン先にフォーカスした写真

透明の軸にインクを入れると、ゆらゆらと揺れる部分が癒されて大好きです。

透明⁨⁩軸の万年筆にインクが入った様子の写真

おわりに

今回は、セーラー万年筆の研究開発部の方にお話を伺いながら、いろいろな黒インクを比べてみました。
いろいろな《黒》があることで、自分好みのインクを探す楽しみも増えていきます。
ベーシックな色だからこそ、「これだ!」と思えるものに出会ったときの喜びは大きいですよね。

皆さんも、好みの黒インクがありましたら、ぜひwith ink.のInstagramのコメントで教えてくださいね!