インクを知る

夏真っ盛り! 盛夏の『ご当地インク』特集

ご当地インクが並んだ様子の写真

前回の記事で特集した、初夏の『ご当地インク』。

第三弾となる今回は、前回同様『ご当地インク』に詳しい文具ライターのふじいなおみさんに協力をいただき、盛夏(夏の一番暑い盛り)となる八月にぴったりの『ご当地インク』をピックアップしてみました。

国内でも有名なお祭りをはじめ、真夏の醍醐味とも言える食や風物詩、観光名所など、様々な視点から集められた、夏色をテーマにした『ご当地インク』をお楽しみください。

(製品提供:ふじいなおみさん)

盛夏の祭りの『ご当地インク』

NE6 TOHOKU BUNGU LAB.:東北、旅するインクセット

※ 在庫少量のためお電話でのお取り扱いは対応しかねます。ご了承ください。

「NE6 TOHOKU BUNGU LAB. 東北、旅するインクセット」のボックス写真
「NE6 TOHOKU BUNGU LAB. 東北、旅するインクセット」の外観一覧
上段左から、青森県:ねぶたまつり、秋田県:竿燈まつり、福島県:松明あかし
下段左から、山形県:花笠まつり、宮城県:七夕まつり、岩手県:さんさまつり

「東北の魅力を文房具を通して発信する」をコンセプトに、東北の文房具販売店が結束し、2019年からスタートしたNE6 TOHOKU BUNGU LAB.(NE6) 。この「東北、旅するインクセット」は、東北6県にあるそれぞれの文房具店が、各県を代表する歴史あるお祭りの色をインクにこめて表現し、作ったもの。

ふじいなおみさん:
「東北の有名なお祭りの多くが8月に行われているのですが、このセットが発売されたのは、まさにお祭りが開催できなかったコロナ禍のこと。ホームページの最後に書かれていた「今年できなかった、お祭りの数々をインクにこめて。次のお祭りで、またお会いしましょう」というメッセージが印象的で、応援するような気持ちで手にした記憶があります」

ねぶたまつりの様子

青森県で毎年8月初旬に開催される、伝統的な夏祭り「ねぶたまつり」。「東北、旅するインクセット」では、「ねぶた」と呼ばれる人形型の灯篭(とうろう)の鮮やかなオレンジの灯の色を再現。

とみや:あきた色百景 萬年筆インク 稲穂(竿燈まつり)

「とみや:あきた色百景 萬年筆インク 稲穂(竿燈まつり)」の外観

創業225年の長い歴史を持つ秋田県の文具店とみやの「あきた色百景シリーズ」の一色として販売されている「竿燈まつり」のご当地インク。竿燈にイメージされる明るい黄金色は、同時に、秋田に暮らす人の原風景とも言える、一面を染め上げる稲穂の色でもあります。

ふじいなおみさん:
「竿燈は、夜空に輝く稲穂。このインクは、そんな「竿燈まつり」の灯籠をイメージした黄金色そのもので、セーラー万年筆の熟練したインクブレンダーによる再現度の高さが光ります。先に紹介したNE6の「東北、旅するインクセット」にも同じモチーフのインクがありますが、同じテーマを扱っていても、実際の色に違いがあるところが、ご当地インクの面白いところです」

竿燈祭りの様子

秋田県で毎年8月3日から6日にかけて開催される伝統的な夏祭、竿燈祭り(かんとうまつり)。米俵を模した提灯が先端に取り付けられた竿燈で、五穀豊穣や無病息災を祈願するこの祭りは、270年近い歴史を持つ。

文具の杜:仙台七夕の夜

※欠品中につき、 9月中旬発売予定

「文具の杜:仙台七夕の夜」の外観

日本で最も有名な七夕祭りの一つである、「仙台七夕まつり」は、江戸時代から続く伝統行事であり、色鮮やかな飾りが街中を彩ります。

ふじいなおみさん:
「七夕を表現したインクはいくつかありますが、このインクが特徴的なのは、吹流しを見上げた際に、目に映る限りなく黒に近い藍色の夜空を表現しているところです。深みのあるブルーブラックとして、万年筆インクらしい濃淡を楽しむこともできます」

「仙台七夕祭り」の様子

仙台七夕まつりの最大の特徴は、商店街やアーケードに吊るされる「吹流し」と呼ばれる長い飾りや、「くす玉」と呼ばれる大きな玉の飾り。色とりどりの和紙で作られており、細かいデザインやテーマの違いを楽しめる。

盛夏の食べ物の『ご当地インク』

ジョイフル本田:日光天然かき氷ブルー

「ジョイフル本田:日光天然かき氷ブルー」の外観

栃木県日光市の天然氷は、江戸時代から続く伝統的な製氷技術に支えられている名物で、地元の職人たちによって丁寧に管理されてきました。

氷が製造されるのは冬の間で、その後は氷室(冷蔵庫)で保管され、夏の間に消費されます。8月の日光市は、この天然氷を使ったかき氷が人気を集めており、清涼感を求める人々でいっぱいになります。

ふじいなおみさん:
「このインクと出会ったのは、「文具女子博 #インク沼2020」に出品されたときで、ジョイフル本田さんによると、その年の製品で、一番好評の色だったそう。インクといえば、それまでは濃いめの色が市販されていた中で、ここまで薄い色が発売され、ヒットしたことが非常に印象的でした」

ブルーハワイ

色のモデルになっているのは、かき氷になる前の、透明度の高い日光の天然氷だが、ブルーハワイの爽やかな青にも近しいかも。

BUNGUBOX:蒲焼き(うなぎ)

「BUNGUBOX:蒲焼き」の外観

土用の丑の日(夏の※土用に訪れる十二支の「丑」にあたる日)にうなぎを食べる習慣は、江戸時代に始まったとされています。 

医師で蘭学者の平賀源内が「土用の丑の日に『う』の付くものを食べると夏バテを防げる」と提案し、その一環としてうなぎが選ばれたという説が有名です。

以来、うなぎの蒲焼を「土用の丑の日」に食べることは日本の伝統的な風習となり、夏の暑さで疲れた体に栄養を補給する意味合いを併せ持つ日としても定着しています。

※立秋前の約18日間

ふじいなおみさん:
「実は鰻の旬は冬なのですが、やはり一般的な食べ頃として広くイメージされるのは、夏の土用の蒲焼ということで、うなぎの蒲焼きの「たれ」の色を再現したという、ユニークなこのインクをセレクトしました。BUNGUBOXさんの創業の地である浜松の名物としても有名です」

蒲焼の写真

浜松のうなぎが特別とされる理由の一つは、養殖の技術や水質の良さが挙げられる。浜松で育てられたうなぎは、身がふっくらとしており、独特の風味がある。

三田三昭堂:墨インク 薄荷(ハッカの香り付き)

「三田三昭堂:墨インク 薄荷(ハッカの香り付き)」の外観

ミントの一つとしても知られるシソ科の植物である薄荷は、特に香りが爽やかで、清涼感のある成分メントールを多く含んでいます。

夏になると日本では、冷たい料理や飲み物、デザートなどに薄荷を用いることが多く、暑い季節に爽快感をもたらすために特に好まれます。

ふじいなおみさん:
「三昭堂さんの墨インクシリーズがユニークである点は、まず香り付きであること。薄荷の爽やかな匂いが香るこのインクは、色も落ち着いたブルーブラックとしても使えるため、使う機会は多いかもしれません。書いている途中にほのかに香ってくるのが好きです。

三田三昭堂の『墨インク』は、「黒」にニュアンスカラーと香りをプラスする、というコンセプトのもと開発されており、その中でブルーブラックもラインナップに加えたいという思いから、薄荷が加えられたそうです」

薄荷の結晶

薄荷から抽出されるメントールを結晶化させたもの。この成分により、薄荷は料理、飲料、医薬品、化粧品、香料など幅広い用途に用いられる。

盛夏の風物詩の『ご当地インク』

文具館タキザワ 長岡花火 -ナイアガラ-/-フェニックス花火-

「文具館タキザワ 長岡花火-フェニックス花火-」の外観写真
「文具館タキザワ 長岡花火 -ナイアガラ-」の外観写真
「文具館タキザワ 長岡花火-フェニックス花火-」のラメ
「文具館タキザワ 長岡花火 -ナイアガラ-」のラメ

新潟県長岡市で毎年8月2日と3日に開催される、日本を代表する花火大会の一つ、長岡花火。この大会は、昭和20年8月1日に起こった長岡空襲で犠牲となった方々への追悼と平和への願いを込めて行われており、約20,000発の花火が夜空を彩ります。その中でも特に注目されるプログラムが、この「ナイアガラ」と「フェニックス花火」です。

ふじいさん:
「ご当地インクに必要なものは、作り手の強い想いだと考えています。新潟県内に6店舗を構える老舗文具館タキザワさんのこのご当地インクには、特に色に込められた想いを強く感じました。このインクの特徴は、花火の細かな煌めきを表現したラメの美しさではないでしょうか」

ナイアガラの写真

ナイアガラの滝を模した仕掛け花火では、全長数百メートルにも及ぶワイヤーに仕掛けられた無数の花火を一斉に点火することで、滝のように火花が流れ落ちる壮大な光景を作り出す。

盛夏の観光名所の『ご当地インク』

文具館コバヤシオリジナルインク 静岡インクシリーズ:駿河湾夏

「文具館コバヤシオリジナルインク 静岡インクシリーズ:駿河湾夏」の外観

静岡県に位置する駿河湾は、富士山を望む美しい湾です。中でも夏の駿河湾は、釣りや海水浴、花火大会、温泉巡りなど、さまざまなアクティビティや自然の美しさを楽しむのに最適な季節です。

ふじいなおみさん:
「以前の記事でも駿河湾のしらすをモチーフにしたインクを紹介した通り、静岡は知る人ぞ知る、ご当地インクを作られているお店が多くあります。今回紹介したインクは、静岡の夏の駿河湾をイメージした色で、綺麗なブルーグリーンに仕上げたそう。静岡県民にとって、駿河湾の色は特別なものなのかもしれませんね」

駿河湾を見下ろす富士山

北東に富士山がそびえ立つ駿河湾では、湾と富士山の美しいコントラストを楽しむことができる。夕暮れ時や早朝の時間帯になると、絶好の撮影スポットとしても人気。

パピアプラッツ(彩玉ink):長瀞渓谷

「パピアプラッツ(彩玉ink)長瀞渓谷」の外観

長瀞渓谷(ながとろけいこく)は、日本の埼玉県秩父郡長瀞町に位置する美しい渓谷です。荒川が形成したこの渓谷は、自然の景観とアウトドアで知られており、特に夏の季節になると、避暑地を求める多くの観光客で賑わいます。

荒川の清流を舟で下るライン下りの他、カヤックやラフティングなど、涼しい水しぶきを感じながら、自然と一体になった川遊びが人気です。

ふじいなおみさん:
「インクをきっかけに行ってみたいなと思っているのが、埼玉県の長瀞渓谷。アクティビティもたくさん楽しめる避暑地で、明治時代から観光地として栄えていたそうです。青い川面に緑が映えるとても美しい渓谷で、この川の透明感と水面のきらめきがインクで再現されています」

長瀞渓谷の浅瀬

浅瀬の川辺では、子供連れの家族が川遊びを楽しむ姿が見られる長瀞渓谷。清らかな水で泳いだり、水生生物を観察したりすることもできる。

おわりに

今回の、盛夏(夏の一番暑い盛り)の『ご当地インク』特集、いかがだったでしょうか? 振り返ってみると、初夏の『ご当地インク』とはまた一味違った、熱気と清涼感を感じさせるインクが多かった印象です。

今年の夏は、皆さんもまだ見ぬ『ご当地インク』を探しに出掛けてみてはいかがでしょうか。