with Creators

with Creators Vol.05 前田祐加さん

今回の作品

『with Creators』とは、イラストや水彩画、カリグラフィーなどさまざまなジャンルのクリエイターさんと、その作品を通して万年筆やインクの魅力をたっぷり満喫していく、月に一度の連載コーナー。

第5回目のクリエイターさんは、カリグラフィーのデザインや作品制作、ワークショップをされている『前田祐加』さんです。

前田祐加さんの作品1
前田祐加さんの作品。
前田祐加さんの作品2
前田祐加さんの作品。

カリグラフィーとは、ギリシャ語で「美しい書き物」という意味を持ち、文字を美しく見せる技術のことを指します。その歴史は2000年以上前の古代ローマ時代までさかのぼるとのこと。

今回は、伝統的なカリグラフィーからモダンスタイルのカリグラフィーまで、様々な書体の作品を制作されている前田さんに、『with ink.』の文字をカリグラフィーでデザインした、ボトルインクのラベルがイメージの作品を描いていただきました!

文字の形をデザインするときのイメージや、インクを使った制作の感想についてもお話を伺うことができました。
アルファベットの書道といわれるカリグラフィーで書かれた『with ink.』の文字をぜひご覧ください。

使用するインクについて

今回の作品では、『SHIKIORI ―四季織―』の春カラーをメインに、『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料』のイエロー、パープルを使用して制作されているとのこと。

今回使用したもの
オブリークホルダーとGペン

また、今回カリグラフィー部分に使用する筆記具は、『オブリークホルダー』と呼ばれるペン軸に、『Gペン』を固定したもの。
『オブリークホルダー』とは、ペン先を斜めに固定するペン軸。今回書いていく『カッパープレート体*』の文字は傾斜がついている書体のため、このペン軸で書くのに向いています。
ペン先の『Gペン』も、筆圧によって線の太さに強弱がつけやすいという特徴があるため、『カッパープレート体』を書くのに適しています。

それでは、落ち着いた大人っぽい春色でまとめられた、魅力的な作品を深掘りしていきます!

※イタリック体を基盤にした、伝統のある優雅で美しい書体。筆圧で線の強弱をつけることや傾斜がついていることが大きな特徴です。

『with ink.』の文字のカリグラフィー

前田祐加さん:
「今回はカリグラフィーの中でも、『カッパープレート体』という書体を崩して書いています。
華やかな印象を作りたかったので、『フローリッシュ』という装飾の線を加え、ラインをふわりと遊ばせるようにデザインしています」

withを書いている様子
線の強弱がリズミカルで、しなやかな線。
フローリッシュ部分の写真
文字を彩る装飾の線、フローリッシュを書いている様子。
カリグラフィー後の様子

前田祐加さん:
「文字部分には、明るすぎず暗すぎることもない、綺麗な深い青の『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱』を使用しています」

『with ink.』の文字が、流れるような曲線が美しい洗練されたデザインに!
太さに強弱のついた線を追いかけるように見入ってしまいます。

使用しているインク:
SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱

イラスト部分

イラスト後の写真

前田祐加さん:
「インクをテーマに、『with ink』の文字を書かせていただくので、ボトルインクのラベルのようなものにしようと思い、フレーム部分を曲線にして、カッチリしすぎず柔らかな印象に仕上げてみました」

花のイラストを描いている様子1
花のイラストを描いている様子2
花のイラストを描いている様子3
フレームを描いている様子

前田祐加さん:
「色が多くても、全体的に落ち着いた印象にしたかったので、『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 夜桜』の落ち着いた桜色をメインに、葉とフレーム部分の色も、やはり落ち着いた色合いを選びました」

ふわりと舞うような『with ink.』の文字と、落ち着いたトーンの優しいイラストが溶け合い、穏やかな春の雰囲気を醸し出しています。

使用しているインク:
SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 若鶯
SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 夜桜
SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱
SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 海松藍
万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml パープル
万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml イエロー

イラストのアウトライン

イラストのアウトラインを描いている様子1
イラストのアウトラインを描いている様子2

前田祐加さん:
「イラスト部分の輪郭線にも、カリグラフィー部分と同じ『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱』を使用していて、全体を調和させるようにしています。
筆で描いたお花などは、それだけでもフンワリ優しい雰囲気でしたが、ガラスペンでラフに、ザックリと縁取りのラインを入れることで、全体を引き締め、形をクッキリと際立たせています」

完成した作品の写真

アウトラインが入り、落ち着いたカラーリングとあいまって、アンティークっぽさも感じるボトルインクのラベルに。
このラベルが貼られたインクボトルの中身は、一体どんな色になるのだろうと、思わず想像してしまいます!

使用しているインク:
SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク 玉手箱

今回の制作を終えて

制作を終えた前田祐加さんに、インクについていくつか質問をさせていただきました。

ー今回インクを使ってみた感想はいかがでしたか?

普段作品を書く際には、不透明水彩(ガッシュ)を使用していますが、今回はSHIKIORIのインクをメインに使わせて頂きました。
染料インクとのことで、滲んでしまうことを心配していたのですが、カリグラフィーのペン先を使っても滲むことなく綺麗な細い線で書くことが出来ました。
色と名前の組み合わせがとても興味深く、蓋を開けて色を見るたびにワクワクしました。


ー今回作品を描いていただきましたが、中でも気に入ったインクの色はありましたか?

どの色もとても綺麗な色合いでしたが、大人に似合うシックな桜色だと思った『夜桜』、そして『海松藍』の、何とも言えない深みのある、青みのある緑色も、惹かれる色だと思いました。

夜桜と海松藍が使われている部分の写真
大きいお花には『夜桜』、左側の小さいお花には『海松藍』が使用されています。

ー前田祐加さんの思う、インクの魅力や面白さについて聞かせてください。

普段使用している不透明水彩(ガッシュ)では、絵具を混ぜて自分の使いたい色を作りますが、インクは1つ1つが既に完成された素敵な色にブレンドされているのが魅力的でした。
また、それにピッタリ合わせた名前もとても面白いと感じました。
カリグラフィーはコツコツと地道な練習が必要ですが、その時の気分に合わせてインクの色を選び、その透明感溢れる色合いを眺めながら文字を書くのは、とても心癒される時間にもなります。
少しずつお気に入りのインクを集めると、カリグラフィーの練習時間も楽しく過ごせそうですね。

使用したインク/画材(セーラー万年筆 提供):
・『SHIKIORI ―四季織― 万年筆用ボトルインク
夜桜、若鶯、海松藍、しとしと、玉手箱
・『万年筆用ボトルインク STORiA MiX 顔料 20ml
パープル、イエロー

イラスト/解説:
前田祐加
HP:https://gris.themedia.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/gris_yuka/

おわりに

今回は、カリグラファーの前田祐加さんに、文字とイラストが組み合わさった、ボトルインクのラベルをイメージした作品を描いていただきました。

美しく流れるような形の文字と、落ち着いた色合いのイラストが組み合わさることで生まれる華やかな世界観を見ることができました。

『with Creators』では、さまざまなジャンルのクリエイターさんと一緒に、その作品を通して万年筆やインクの魅力をお届けしていきます。
次回は4月公開予定ですので、どうぞ楽しみにお待ちください。